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日々の萌語りとSS
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一日早い、メリークリスマス!

今年は素晴らしいクリスマスプレゼントをもらってしまいました。
☆矢グッズとフィギュアvvvです。
最早そんなものは手に入らないと思っていたので、感激のサプライズ!

あまりに嬉しかったので、ラブラブ激甘なクリスマスSSを書いてみようと思い立ちました。
(まさかのリアムウ)

旅先の早書き(←)でいつにもまして拙いですが、気分が盛り上がったところで勢いのままに。w


*拍手ありがとうございました。
死体の始末について、「そもそもアナザーディメンションしちゃえばよいのでは」という大変賢いコメントをいただきました。ほんと、そうですよね!
あるいは、サガがADで異空間に放り込んだのを、カノンが厭がらせでせっせとGTで送り返しているのだったリして。



 



Cloud nine seventh heaven
 
通りには焼き栗や軽食の屋台が並び、行きかう人々で街は昼間の様な賑わいだった。広場には大きなリボンがかかった巨大なツリーが輝き、はしゃぐ子供達を乗せた移動式メリーゴーラウンドが夜空の下で賑やかな音楽を奏でている。クリスマスイブの幸せな光景。
シンタグマ広場からオモニア広場へ、そしてその先へと足を延ばすと、街の様子が段々雑多で庶民的な雰囲気になって来る。
私は彼の小宇宙の気配をたどって大通りの角を曲がった。
 
 
「こんばんは、アイオリア」
「ムウ!」
「街の様子はどうですか?これは陣中見舞いです」
紙に包まれたギリシャのクリスマス菓子をアイオリアに渡す。
 
「ありがとう、ちょうど小腹が減ってきたところだ。街のほうは、今夜は酔っ払いの喧嘩が4件、かっぱらいが5件、ちょっと性質の悪そうなカツアゲが3件、女がらみの騒動が…」
「はいはい、大変ですね」
いつにもまして細々とした軽犯罪のオンパレードだ。こんなことのために黄金聖闘士がスタンドバイとは。
 
「まあ、今のところ深刻な事件の気配はないから良かった」
「そうですね」
 
先の聖戦が終わってから各界間の和平は整い、現在危機管理アラートレベルは最低である「1」だ。だがクリスマスの様な宗教もからむ大きな祭事の際は、やはり警戒態勢がしかれ、聖域も地元警察に協力して要員を出す。
 
それにしても、なぜ黄金聖闘士が。――というか、アイオリアがこの任務につかなくてはならないのだ?大統領官邸や観光客で賑わうアクロポリスから、このような場末の路地までひとりで歩き回り、街の様子に目を配るのが何故アイオリアなのだ?
 
 
「それは、俺が担当すればひとりで済むだろ?確かにムウの言うように、現在それ程の危険は予想されていない。だからこそ、聖域からは徒に人員を割く必要はなく、有事の際に地元警察と協力して十分な対応ができるのであれば最小限の備え、すなわち黄金聖闘士ひとりでよいのだ」
 
どうも話がかみあわない。私が言っているのは、他の黄金の誰でもなく、何故アイオリアなのか、ということなのに。
 
「聖域でも一応ちょっとした忘年パーティーみたいなものをやっているのですよ。他の黄金聖闘士たちはそこに顔を出していますが」
そしてそれぞれにとても楽しそうにやっていますが、とまでは言わなかった。
 
「ああ、パーティーの話は知っている。そもそも今日のパーティーに出たいから当番を変わってくれ、と頼まれたのだ」
誰に頼まれたとか言わなかったが、だいたい予想がつく。それが誰だったのかを確認すると技を発動してしまいそうな気がするので、敢えてそれ以上は訊かない。
ただ口の中で小さくつぶやいてしまった。
「…なんでそう要領が悪いんですか?」
「?」
 
それが彼だから仕方ないとは分かっている。そもそもアイオロスの件のときだって、いいわけ一つしなかったのだから。
だが傍から見ていると時にじれったくなる。しかも案外本人はあっけらかんとしているところがまたイライラさせられる。
華やいだ街でひとり犯罪の気配を探り、吹きさらしの路地を歩きまわっては酔っ払いの喧嘩を仲裁する。クリスマスだからと言って何を期待しているわけではないが、もう少しましな過ごし方を想定していたとしても当然ではないか?
 
街のあちこちにある小さな泉水のふちに並んで腰をかけた。壁嵌に彫られた獅子の頭の大きく開けた口から水がちょろちょろと流れ落ちている。ここにもクリスマスの夜にひとり働き続けている獅子がいる。獅子とはそういうめぐりあわせなのか。
 
私の横でアイオリアは菓子の包みを開くと、アーモンドの粉がたっぷりかかったギリシャのクリスマス菓子をつまんだ。路地裏のタベルナのドアが開き、陽気に騒ぐ声と食べ物の匂いが一瞬漏れた。窓には派手な赤と緑のクリスマスの飾りがいくつか下げられている。そんな場末のクリスマスの光景をアイオリアはニコニコ眺めている。路地を冷たい風が吹きぬけて、私達は2人ともぶるっと身震いした。
 
アイオリアにこんなところでクリスマスを過ごしてほしくない。もっとふさわしい場所があるというのに。
 
彼はいつも無欲だ。あの13年間も、雑兵なのだか黄金なのだかわからない生活に甘んじていた。でも私は、アイオリアは彼にふさわしい扱いを受けるべきだと、そんなアイオリアを見るたびに不快な気持になった。
今日もクリスマスだと言うのに、冷たい風に首をすくめながら菓子を口に運ぶアイオリアを見ていると、じりじりした気持ちになる。
 
 
――ああ、そうか。なんでこんなに苛立つのかというと、アイオリアが割に合わない思いをするのが、私はいやなのだ。
 
アイオリアにはいいことが沢山訪れて欲しい。13年間耐えてきたその分も。
アイオリアの毎日は幸せなことだけで一杯になって欲しい。そのために私は何でもしたいのに。だが今日だって結局、菓子を届ける位で――
 
 
そんな私にアイオリアが振り返る。
「ムウの差し入れの菓子、うまいな」
アイオリアの明るく幸せそうな笑顔。
寒さで鼻が赤くなっているくせに、風に乱れた髪の下で屈託なく笑って。かじかんだ指を粉だらけにして。
 
「…幸せな人ですね」
「ん?」
きょとんとしたアイオリアの顔に、思わず苦笑交じりのため息が出た。
「幸せな人だと言ったのです。クリスマスイブに当直にあたっても、菓子ひとつで」
アイオリアはこちらに向き直る。菓子をごくんと飲みこむと、一瞬私を真正面から見る。
 
「ああ、今、俺は幸せだ。ムウが俺に菓子を持って来てくれて、横に座っているからな」
「え」
アイオリアは眼をそらすと、手の中の菓子をみつめる。
「クリスマスだろうと何だろうと、ムウが今ここに生きて俺の隣にいる。それだけで俺は十分に幸せになれる」
薄暗い街燈でもわかる。耳が赤くなっているのは寒さのせいだけではない。
 
「…まあ、俺にとっては幸せとはそういうことだ。お前には別にどうでもいいことだろうがな」
アイオリアは照れ隠しのように残りの菓子を一口に頬張った。

胸の奥があたたかくなる。
 
「…保証します、アイオリア。そんなことなら、貴方はこの先もずっと幸せですよ。
だって私はいつもあなたの隣にいますから。問答無用で」
私は首を傾けて、並んで座ったアイオリアの肩にこつんと頭をあてる。
「そして、どういうわけかあなたが幸せだと私も幸せみたいです」
「ムウ!」
 
アイオリアの瞳が明るく輝く。そのまま私に腕をまわそうとするが、私はひらりと身をかわした。
「その粉だらけの指は勘弁して下さい」
「…」
途方に暮れたように粉の付いた指を広げるアイオリア。
 
私はその手をとると、指をぺろっとなめた。
「はい、これできれいになったでしょう?」
アイオリアに微笑みかける。
 
 
――今度は身をかわすことはできなかった。
力強い腕に息が止まるほどぎゅっと抱きしめられる。
 
裏ぶれた路地に遠くからかすかなクリスマスソングが流れてくる。
アイオリアの冷たい外套と髪を頬に感じながら、私もすごく幸せだった。



END

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