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日々の萌語りとSS
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大晦日ですね!妄想していると本当に一年たつのは早いです。一体何をしていたのか…(だから妄想)
そんなわけで、1年の締めくくりということで拙サイト本命のサガムウ大晦日SSです。
 
 
もともとは、サガはムウ受け界ではお気の毒な役回りが多くて、スペック高いのにふられてばかりで可哀そう~と思ったのが、サイト開設の動機のひとつでした。(ギャグ・ネタキャラ扱いは好物♪)
 
ところがいざ自分で書き始めてみると、何故か拙宅でもサガムウは悲恋ばかり、両想い設定なのにサガは殆どいい思いをしてないじゃありませんか。
きっとこれがサガムウの本質なのかも…と、思いつつ、やはり一年を締めくくるラブ2サガムウ(はあと)を書こうと思いたちました。
 
そんなに(はあと)してませんが、当サイトサガムウ比では中甘くらいのSSです。
 
 
 
この1年間どうもありがとうございました。
よろしかったら、また来たる2011年もおつきあい下さいませ。
皆さま、よいお年を。
 
 
 
 


Holiday Nuts
 
分かっていた通りだった。12月の後半は互いに忙しくなるからプライベートの時間はとれそうにないと。だから全然会えないのも予定通りなのだ。
 
公式行事で顔をあわせることは多々ある。しかしサガは公式の場では全くの他人行儀だ。マナーブックの手本の様に慇懃で、いっそ同席しない方がましだと思う程そっけない。
 
せっかくナッツもまだ沢山あるのに。
白羊宮の私室の暖炉の前で、私は木のボウルの中にまだ沢山入っている様々な木の実をざらりとかきまわした。
 
 
***
 
遅い秋になるとサガはいつも様々な殻付きのナッツを買ってきてくれる。過酷な自然環境のジャミール育ちの私は、高カロリーで自然の食べ物が好物だ。
サガは詰め合わせたナッツの袋を買ってくることもあれば、量り売りで自分の好きなナッツを多目に入れて買ってくることもある。
 
栗みたいな艶々のヘーゼルナッツ、小さな穴が沢山あいたアーモンド、まん丸のマカデミアナッツ、くし型で焦茶色のブラジルナッツ、でこぼこの胡桃。細長いピーカンナッツやカシューナッツが入っていることもある。
 
暖炉の前の敷物に座って時々ナッツを食べながら、長い冬の夜を一緒にすごす。
 
「サガ、ブラジルナッツばかり食べてませんか?」
「そうか?」
「そうですよ。好きなのばかり食べないで、ちゃんと順番に食べて下さい」
私はブラジルナッツは好きでも嫌いでもない。だから本当は別にどうでもいいのだが、わざとそんな風に言ってみる。そしてサガは胡桃を食べない。彼は私が胡桃を好きなのを知っている。
 
ブラジルナッツの殻は大きくて固い。最初の詰め合わせについていた兵隊のくるみ割り人形では、人形の歯の方が壊れてしまいそうだった。だから次はスクリュー式のくるみ割りをナッツと一緒に買ってきてくれた。しかし転がるナッツは割りにくい。
もちろん私達にとって手で割ることは簡単だ。だが殻と一緒に実も粉々に砕けてしまうから、やはり手で力まかせというわけにはいかない。
 
「仕方ないですね」
そんなわけで、いつの間にか修復道具で割るようになった。硬い殻もぱちんと一発で綺麗に割れる。
「さすがだな」
「それは当然ですよ」
シオン様ごめんなさい、と心の中で謝って、私はサガの膝の間でナッツを割る。
 
生のナッツもおいしいが、私は焼いたナッツも好きだ。これも修復に使う金属製のこてにナッツを乗せて暖炉の中でじっくり火を通す。ぱちぱちとはぜる薪の音と木の実の焼ける匂い。
香ばしい熱々のナッツをさまそうと口にくわえていると、いつもサガに半分とられた。
 
 
***
 
暖炉の明るく踊る炎の中に、ナッツの殻を放り込む。
今日は大晦日だ。聖域の私的な年越しパーティーに呼ばれているが、なんとなく気がすすまない。
動き出す気になれず、暖炉の前の敷物の上にじっと座って火を眺める。
 
 
…今のスケジュールだと、多分来年しばらくまでプライベートでは会えないだろう。
教皇の補佐役であるサガは今夜も新年を迎えるための夜通しの儀式の筈だ。新年の式典では顔をあわせることになるが、どうせ話す機会もないだろう。
 
床に置かれたナッツのボウルを手にとって、もう一度ざらりと木の実をかきまわす。
 
新年の式典でサガの顔を見たいが、見たくない気もする。
公の場のサガは周囲全ての人にとても感じよくふるまいながらも、ある意味とりつくしまもない。
私にも見知らぬ他人にも、儀式用の祭器にもオリーブの枝にも、全く同じように通りいっぺんの視線を走らせるだけだ。
公的な場で何か特別な感情を見せて欲しいなどとは更々思わないが、せっかく顔をあわせてもこちらをまともに見ようともしないと、何だかサガを遠く感じる。
 
明日の新年の儀式のことを思うと知らず小さな溜息が出た。
あと何時間かすると新年だ。聖域のカウントダウンのパーティーにはどうせサガもいないし、騒ぎに行くような気分でもない。
 
年が明けたら一応パーティーに顔を出して挨拶だけはしてくるかと、そこまで考えたその瞬間、突然目の前の空間が奇妙によじれ、閃光が部屋に走った。
眩しさに一瞬まばたいた目を開くと、まだちらちら空間の裂け目が揺らめく薄暗い部屋にサガが立っていた。儀式用の凝った綴れ織りの金と白の法衣のままだ。
 
「サガ!一体どうしたんですか?!」
「ブラジルナッツの殻はやはり硬いな」
サガは右手に持ったナッツの網袋を持ち上げてみせる。
「え?」
「あまり時間が無い。割ってくれるか?」
 
 
 
***
 
暖炉の前で一緒に毛布にくるまって、裸の腕を伸ばすとナッツを一つ手に取り聖衣用の特製プライヤーで割る。
私達の裸の胸に殻がこぼれ落ちる。
 
「――今晩は公式行事でしたよね。一体どうしたというのですか?あなたらしくもない」
「今は休息時間だ。年越しの儀式は長丁場だから、夕方には長めの休息が入る。だからこの1時間は、私的な時間を私人として活用することにした」
サガは私の横でむくりと起き上がり、法衣を手にとる。
「もう行かなければ」
 
「…公の場では目も碌にあわせないのに、儀式の合間に抜け出してくるとは随分思い切ったことをしますね」
サガは豪華な法衣に腕を通しながら、私の表情を見ると手を伸ばして指の背でそっと頬にふれた。
「お前のことは、公的な場ではなるべく見ないようにしている。我慢するのは苦手だからな」
 
サガの指を頬に感じながら、暖炉とナッツで急に体が暖かくなってきた。大晦日にふさわしい気分かもしれない。
私は今割ったナッツをサガに差し出す。
「はい、これを食べに来たんでしょう?」
「半分でいい」
サガは私にナッツをくわえさせるといつものやり方でぱきんと折りとって半分だけ食べる。
 
「明日の仮眠時間にまたくる。やはり我慢するのは得手ではない。…明日はもっと時間をかけて存分に」
そう耳の中に低い声で囁くと、
「――良い年を」
と言ってサガは来た時と同様あっという間に空間の向こうに消えて行った。
 
 
「……。全く何しに来たんだか――。ナッツを一袋持ってきたのに、結局食べたのは半個だけじゃないですか」
 
頬が火照るのを感じて小さな声で文句を言いながら、毛布にくるまったまま着替えを取りに立ち上がる。賑やかな年越しパーティーに行ってみようという気分になった私は、ホリデーナッツのボウルからナッツをひとつ取って、自分のためにぱちんと割った。
 
 holidaynutsjpg.jpg
 
 







 
***
 
 
*秋から冬は暖炉の火の前でラブラブなふたり(半分肌色)が、栄養豊富なナッツを仲良く食べてるといいな、というだけの妄想です。ナッツを割るについては、ムウ様にはぜひ修復道具を使ってほしいところです。何もないところで育ったし、きっとムウ様はワイルドで合理的な職人(使えるものはなんでも活用)だろうと妄想。殻もちゃんと火にくべます。
 
*アメリカやヨーロッパでは晩秋~初冬になるとナッツの詰め合わせがあちこちで売られています。カロリー怖いですが、リスのように無心に割っては食べていると幸せに。特に暖炉の前だったりすると訳もなくホリデーな気分です。
ちなみに胡桃は二個あればナットクラッカ―がなくても割ることができます。(割れ目部分を組みあわせて力を加える)最後のひとつをどうするかという課題は残りますが。
  
(オーブンで焼いたナッツに、クミンやカイエンペパー、ローズマリー、パプリカ、黒胡椒など好きなスパイス、プラス甘辛好みだと砂糖、コーンシロップやシナモン等々で味をつけたスパイストナッツ(分量は味を見ながら適当でも大丈夫)もホリデーシーズンの自家製簡単おつまみでおすすめ。)
 

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