日々の萌語りとSS
「いつまで喧嘩してるんだよ、そんな場合じゃないだろ!」
遂に我慢しきれなくなった私がどなると、アイオリアとミロははっとしたようにこちらを見た。
「そもそもミロたちが喧嘩するからこんなところに落ちちゃったんだろ?
どうするんだよ、こんな誰も来ないようなところ・・・」
二人は気まずそうに一瞬目をあわせたが、また互いにふん!とそっぽを向く。
ほんとにくだらない。
そもそも何で喧嘩になったか分からないくらいのどうでもいい理由で、
2人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
たまたま傍にいた私も成り行き上二人を止めようと、周りをうろうろしている内に、
彼らと一緒にこの太古の水牢だったような洞窟へ滑り落ちてしまったのだ。
私はもう20回以上にはなる溜息をついて洞窟の天井を見上げた。
5-6mはありそうな洞窟の天井には、私たちが滑り落ちてきた小さな穴が見えている。
しかし地上では私たち3人の足をとらえた広い開口部も、途中からは一人ずつがやっとの狭さになり、
まだ体の小さい私たちですら重なり合うように落ちてきたのだ。
ましてや、この高さではどう考えても天井の穴にとどくとは思えない。
かといってより不快で不安なのは足元のほうだ。と言うのはこの洞窟には海水が満ちている。今はまだ踝くらいだが、鉄の格子から見える黒い空からはポツポツと大粒の雨が落ちてき始めた。
私たちは誰も泣かなかった。
まだ幼くても黄金の聖衣を継ぐ者としての幼いなりの矜持があったからだ。
もちろん、仲間の前で自分が独りだけ一番先に泣き出してしまう訳にはいかないという意地もあっただろう。
でも本当は、一番底の部分では―。
一度泣いてしまうと、自分は崩れてもう立ち直れなくなるだろうと無意識に分かったいたのだ。
この張り詰めた糸が切れてしまったら、自分達はどうなってしまうのか恐ろしくて、泣くこともできなかった。
雨足はますます強くなり、叩きつけるように降ってくる。
鉄格子の向こうに見える海の色もいっそう黒くなり、禍禍しいものが襲ってきそうだ。
不安を紛らわすために、アイオリアとミロはまた喧嘩を始めた。狭い洞窟内に二人の大声が響く。
私はイライラしてつい叫んだ。
「二人とも、いい加減にしろ!そんなこといってる場合じゃないだろ。このままでられなかったらどうするんだよ!雨もすごいし、海だってこんなじゃないか。この洞窟が水でいっぱいになったらどうするんだ!」
自分で言ってハッとした。一番起こって欲しくないことを口にしてしまった。
意識に登らせて、その可能性を認めてしまった・・・
二人の顔に恐怖が浮かぶ。私も自分の言葉に自分がショックを受けて、立ちすくむ。
そういえば、さっきは踝くらいだった水がいつのまにか膝の下まで来ている。本当にこのまま水が満ちたら・・・!
私はパニックになって辺りを見回す。私たちが滑り落ちてきた穴が天井にある。しかし、地上では大きく口を開けていたそれは子供独りがようやく抜けられる程度の大きさしかない。あの穴をうまく利用すれば溺れ死ぬことだけは避けられるかもしれないが、だが、どうやって?
今度こそ眼が熱くなってきた。私は今にも泣きそうな顔をしていたと思う。他の二人と同じように。
その時アイオリアが突然叫びだした。「にいさーん、アイオロスにいさーん!」
私たちも一緒になって叫ぶ「サガー!」「アイオロスー!」
きっと、こんなところからは誰にも私たちの声は届かない。でも、叫ばずにはいられなかった。
「アイオロス―!!」「サガァ―!!」
そのとき。頭上から「下がっていろ!」という声がしたかと思うと、洞窟内は黄金の閃光につつまれた。
洞窟内に降り注いだ土埃と細かな瓦礫に一瞬目の前が全く見えなくなる。
しかしもうもうと土埃が立ち込めた視界にかすかに見える影は、落ち着いて暖かな声が、が戻る前に私たちは目の前に降り立った影に飛びついた。
「「「アイオロスー」」」
「「「わああああーん!!!」」」
「「「ごめんなさいー」」」
安堵のあまり私たちは一斉に泣き出した。
先ほどの暗く汚れた空が嘘のように晴れ上がった雨上がりの空には、大きな虹がかかっていた。
アイオロスは私たちを3人まとめて抱き上げる。
「ほら、虹だ」
「わぁー」
「虹って、レインボウっていうだろ。ボウは弓っていう意味なんだ」
「へえー、レイン ボウってそういう意味なんだ」
雨上がりの空にかかったレインボウ。嵐のあとの澄んだ天球を渡る大きな大きな弓矢。アイオロスのように、まっすぐに飛んできてくれて、私たちを助けてくれた。
私は違う風にかんがえていた。ボウはちょう結び。レインボウは空にかかった大きなリボン。
私たち全員を腕に抱いて、まとめてぎゅっとしてくれる。私たちはそもそもの喧嘩などどこ吹く風で笑いあう。
レインボウは空の大きな弓。そしてやっぱり大きなリボンだ。私たち全部を結んでくれる。
レインボウは空にかかった雨の弓だが、ボウにはリボンという意味もある。
空にかかった大きな蝶結び。
あなたの弓が、私とあなたを結ぶ。
風の神の名を持つあなたは何者にもしばられない。
自由に空をかけめぐるのだ。
なにものにも縛られない自由なこころ。
遂に我慢しきれなくなった私がどなると、アイオリアとミロははっとしたようにこちらを見た。
「そもそもミロたちが喧嘩するからこんなところに落ちちゃったんだろ?
どうするんだよ、こんな誰も来ないようなところ・・・」
二人は気まずそうに一瞬目をあわせたが、また互いにふん!とそっぽを向く。
ほんとにくだらない。
そもそも何で喧嘩になったか分からないくらいのどうでもいい理由で、
2人は取っ組み合いの喧嘩を始めた。
たまたま傍にいた私も成り行き上二人を止めようと、周りをうろうろしている内に、
彼らと一緒にこの太古の水牢だったような洞窟へ滑り落ちてしまったのだ。
私はもう20回以上にはなる溜息をついて洞窟の天井を見上げた。
5-6mはありそうな洞窟の天井には、私たちが滑り落ちてきた小さな穴が見えている。
しかし地上では私たち3人の足をとらえた広い開口部も、途中からは一人ずつがやっとの狭さになり、
まだ体の小さい私たちですら重なり合うように落ちてきたのだ。
ましてや、この高さではどう考えても天井の穴にとどくとは思えない。
かといってより不快で不安なのは足元のほうだ。と言うのはこの洞窟には海水が満ちている。今はまだ踝くらいだが、鉄の格子から見える黒い空からはポツポツと大粒の雨が落ちてき始めた。
私たちは誰も泣かなかった。
まだ幼くても黄金の聖衣を継ぐ者としての幼いなりの矜持があったからだ。
もちろん、仲間の前で自分が独りだけ一番先に泣き出してしまう訳にはいかないという意地もあっただろう。
でも本当は、一番底の部分では―。
一度泣いてしまうと、自分は崩れてもう立ち直れなくなるだろうと無意識に分かったいたのだ。
この張り詰めた糸が切れてしまったら、自分達はどうなってしまうのか恐ろしくて、泣くこともできなかった。
雨足はますます強くなり、叩きつけるように降ってくる。
鉄格子の向こうに見える海の色もいっそう黒くなり、禍禍しいものが襲ってきそうだ。
不安を紛らわすために、アイオリアとミロはまた喧嘩を始めた。狭い洞窟内に二人の大声が響く。
私はイライラしてつい叫んだ。
「二人とも、いい加減にしろ!そんなこといってる場合じゃないだろ。このままでられなかったらどうするんだよ!雨もすごいし、海だってこんなじゃないか。この洞窟が水でいっぱいになったらどうするんだ!」
自分で言ってハッとした。一番起こって欲しくないことを口にしてしまった。
意識に登らせて、その可能性を認めてしまった・・・
二人の顔に恐怖が浮かぶ。私も自分の言葉に自分がショックを受けて、立ちすくむ。
そういえば、さっきは踝くらいだった水がいつのまにか膝の下まで来ている。本当にこのまま水が満ちたら・・・!
私はパニックになって辺りを見回す。私たちが滑り落ちてきた穴が天井にある。しかし、地上では大きく口を開けていたそれは子供独りがようやく抜けられる程度の大きさしかない。あの穴をうまく利用すれば溺れ死ぬことだけは避けられるかもしれないが、だが、どうやって?
今度こそ眼が熱くなってきた。私は今にも泣きそうな顔をしていたと思う。他の二人と同じように。
その時アイオリアが突然叫びだした。「にいさーん、アイオロスにいさーん!」
私たちも一緒になって叫ぶ「サガー!」「アイオロスー!」
きっと、こんなところからは誰にも私たちの声は届かない。でも、叫ばずにはいられなかった。
「アイオロス―!!」「サガァ―!!」
そのとき。頭上から「下がっていろ!」という声がしたかと思うと、洞窟内は黄金の閃光につつまれた。
洞窟内に降り注いだ土埃と細かな瓦礫に一瞬目の前が全く見えなくなる。
しかしもうもうと土埃が立ち込めた視界にかすかに見える影は、落ち着いて暖かな声が、が戻る前に私たちは目の前に降り立った影に飛びついた。
「「「アイオロスー」」」
「「「わああああーん!!!」」」
「「「ごめんなさいー」」」
安堵のあまり私たちは一斉に泣き出した。
先ほどの暗く汚れた空が嘘のように晴れ上がった雨上がりの空には、大きな虹がかかっていた。
アイオロスは私たちを3人まとめて抱き上げる。
「ほら、虹だ」
「わぁー」
「虹って、レインボウっていうだろ。ボウは弓っていう意味なんだ」
「へえー、レイン ボウってそういう意味なんだ」
雨上がりの空にかかったレインボウ。嵐のあとの澄んだ天球を渡る大きな大きな弓矢。アイオロスのように、まっすぐに飛んできてくれて、私たちを助けてくれた。
私は違う風にかんがえていた。ボウはちょう結び。レインボウは空にかかった大きなリボン。
私たち全員を腕に抱いて、まとめてぎゅっとしてくれる。私たちはそもそもの喧嘩などどこ吹く風で笑いあう。
レインボウは空の大きな弓。そしてやっぱり大きなリボンだ。私たち全部を結んでくれる。
レインボウは空にかかった雨の弓だが、ボウにはリボンという意味もある。
空にかかった大きな蝶結び。
あなたの弓が、私とあなたを結ぶ。
風の神の名を持つあなたは何者にもしばられない。
自由に空をかけめぐるのだ。
なにものにも縛られない自由なこころ。
PR
この記事にコメントする
カレンダー
02 | 2025/03 | 04 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | ||||||
2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 |
9 | 11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | 21 | 22 |
23 | 24 | 25 | 26 | 28 | 29 | |
30 | 31 |
ブログ内検索
カテゴリー
バナー。リンクの際はお持ち帰りでお願い致します。
プロフィール
HN:
たると
HP:
性別:
女性
自己紹介:
中羊受および双子・獅子・シベリア師弟などについての妄想が渦巻くコキュートスです。
その他☆矢派生作品(Ω、LC等々)の感想も。
御用の方は拍手またはこちらまでどうぞ↓
gotoplanisphere☆yahoo.co.jp ☆→@
その他☆矢派生作品(Ω、LC等々)の感想も。
御用の方は拍手またはこちらまでどうぞ↓
gotoplanisphere☆yahoo.co.jp ☆→@
アーカイブ