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日々の萌語りとSS
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サイト開設一ヶ月記念・挑戦作を書いてみました。(ぬるいですがR18描写ありますのでお気をつけ下さい)


***

その日はいつもより時間があったので、ハイランドの北にある氷食湖へと足を伸ばした。
 
 
北国特有の冷たい色の高い空の下、ヒースに覆われた丘陵やV字渓谷が重なり合うようにどこまでも続いている。
これは大昔に大きな氷河が大地をえぐり取り、流れていった跡だ。そういう目で見ると、大きな塊がこの地を砕き押し広げ無理やり通っていった痕跡がはっきりと見てとれる。
そして氷河が去ったその後はLochと呼ばれる数多の細長い湖がある荒地となった。
 
 
12月のハイランドではまだ昼の3時なのに辺りはすでに薄暗く、身を切るような冷たい風が吹きすさんでいる。
 
伝説の怪物が住むといわれる湖。
確かにこの深くいかにも冷たそうな暗い水の奥には、なにか人の知らない生き物がひっそりと隠れ住んでいても不思議ではないように思える。
水の透明度は高いが、それもすぐに底知れぬ深さを感じさせる暗い闇に溶け、湖の底が果たしてどの程度深いのか、全く想像がつかない。
 
この底知れぬ湖の奥に怪物が住んでいるのか。
人の心と同じように。
 
 
しかし20世紀の科学は怪物を消し去ってしまった。
この湖の冷たく透き通った暗い灰緑の水は、底知れぬ闇を溶かしたものではなく、プランクトンなどの微小生物が少ないためであることが分析された。
そして徹底的なローラー作戦と、ソナーによる調査。
神秘の湖はひっくり返され、ふるわれ、隅々まで照らし出されて、もはやいかなる謎も生息できないまで解剖されてしまった。
 
 

遠くどこまでも伸びていく細長い湖面を見渡しながら、瞳に侮蔑をうかべた彼が言う。
「馬鹿な話だ。全てをはっきりさせようとするあまり、結局は全てを失うことになったのだ。怪物がいない湖などに何の魅力がある?」
彼は荒々しく身を翻すと、湖を見下ろす今は廃墟となった古い城に続く階段をどんどん上っていく。
私も慌てて彼を追う。
 
彼は砦の天辺に着くと半ば瓦礫となった城壁に腰を下ろし、背中を壁にもたせかけた。
私は彼の開いた足の間に座り、彼に軽く寄りかかる。
彼は自分が着ていたインバネスコートの中に私をすっぽりといれる。
そのまま二人で北海からの身を切るような風に吹かれながら冷たい湖を眺めた。
 
 
 「・・・髪が伸びたな」
私の髪に顔を埋めていた彼が呟く。インバネスコートの袖の穴から腕を出すと、自分の髪を縛っていた髪紐をとく。
その紐で私の髪を器用にまとめて結ぶと、片側に流す。
「これで邪魔にならない」
「・・・私には別に邪魔ではなかったですよ。むしろ結ばれると首筋が寒いのですが」
彼はクッと喉の奥で笑う。
「すぐに寒くなくなる」
そしてぐっと私を自分に引き寄せると、そのままその手がインバネスコートの下で動き出した。






*以下、大人シーン(といっても大したこと無いです)に挑戦してみました。
ぬるいです。その手の描写に抵抗が無く、生暖かく見守ってくださる方はお進み下さいませ。

 
 
 
 
 
「・・・!」
サガの手が私の輪郭を辿り、そのまま着ていたオイルドセーターの中に進入する。
素肌に触れた彼の手の冷たさに一瞬息を呑んだが、その冷たい指先が胸の先をつまむと思わずため息が漏れた。そのまま優しく胸の先を転がすように愛撫しながら、首筋に熱い唇をはわせる。
「サガ、待ってください!こんなところで・・・」
「こんなところに、こんな時期にくる物好きなど私とお前くらいだ」
そういいながらもサガの手と唇は次々と私の官能をかきたてる。
 
 
彼は私の心と同じくらい私の身体のこともよく知っている。
否、私の今のこの身体は、そもそも彼が作ったといってもよい。
だから彼は私の身体から思った通りの反応を自由に引き出すことができるのだ。
 
 
みるみる内に私は自分がコントロールできない状態になっていった。
サガに背中を預けて必死で声を押し殺しながら、後ろから好きなように愛撫される。

 
そのとき、誰も来ない筈だった砦の下のほうから人の声と足音が風に乗って聞こえてきた。
「サガ!人が!」
「お前さえ静かにしていれば、大丈夫だ」
私は羞恥に顔が燃えるのを感じながら、必死で抗弁する。
「じゃあ、これ以上はやめてください!」
「しっ、来るぞ」
足音と談笑する声はどんどん近づいてくる。
それなのにサガは私を翻弄するコートの下の手を止めない。私は快感に目がくらみ、思わずまぶたをぎゅっと閉じる。
「目を閉じるな。不審に思われるぞ」
彼は押し殺した声で囁く。
慌てて無理やり目を開いた私の耳に、人声ははほんのすぐそこの角の先から聞こえてくる。
その瞬間、サガの指が私の中に入ってきた。
「は・・・ぁ・・・」
思わず息をはいて、まぶたを伏せかけた私にサガの声。
「こんにちは」
「こんにちは、寒いですね」
私もハッとして必死で目を開き、平静を装う。
 
現れた3人の旅行者は、こんな季節はずれの夕方に吹きっ晒しの廃城の天辺に人がいたことに驚き、好奇心をそそられたようだった。
こんなとき、サガの整った容貌が恨めしい。人々の関心をすぐに惹きつけてしまうのだ。
私は湖面を眺める振りをしながらうつむき、拳を唇に押し当てて必死に声が漏れるのを抑える。

「ギリシャからいらしたんですか!それはまた遠いところから」
「こんなに雄大で野趣に満ちた風景は他にはありませんから。ここで日が沈むまで堪能しようと思って」
サガは優雅に微笑みながら感じよく受け答えをしている。
「しかし、相当寒いでしょう」
「ええ、だから二人でひとつのコートに入っているんですよ。インバネスコートはとても便利ですね。
それに、このスコットランドのオイルドセーターもとても暖かいですし」
「そうですか」
エディンバラから来たという旅行者はスコットランドを誉められて嬉しそうだ。
サガの美しい笑顔と人をそらさない魅力的な態度に幻惑されて、旅行者たちは私の様子がおかしいことに気がつかないようだった。
私を除く人々は和やかに話を続ける。
 
しかし私は、いまや何本にも増えたサガの指と、前を捌く彼の巧みな愛撫に急速に限界が近づくのを感じ、コートの中でサガの手を強くつかんで必死に合図を送った。
サガも腕の中に抱えた私の身体が積みあがった快感に震えだしたのに気がついたようだった。
もう私の限界が遠くないと判断した彼は、すぐに旅行者たちとの会話をこれ以上ないほど上手に打ち切った。
これも人と会うのが仕事の教皇職をそつなくこなす彼ならではの技術だろう。
 
 
3人の旅行者の足音が遠ざかり、また誰もいない廃墟で二人だけになる。
「よく我慢したな、ムウ。お前の欲しいものをやろう」
彼の指が私から抜かれる。
「い・・・やだ、こんなところで」
「いやなら、やめるが?」
どうしてそんな意地悪を言うのだろう。
まぶたがじんと熱くなり、涙で視界がぼやけた。
「いやか?」
耳元に熱い息で囁きながら、彼の手は私の前を優しくひと撫でする。
私は下を向き、首をフルフルと振る。閉じた目の端から熱い涙が零れ落ちる。
「いい子だ」
そのまま彼が後ろから私に押し入ってきた。
 
 
自分ではない熱い塊が自分の中を出入りする。
この荒々しくも美しい凄烈なハイランドの渓谷を削り出した大きな氷塊のように。

 
伝説の怪物が住むといわれた暗い大きな湖を見下ろす、廃墟となった古城の上で。
凍りつく北海の高く澄んだ空の下、どこまでも広がる不毛な荒地を前に。
彼に後ろから抱えられ、ひとつのインバネスコートにくるまれたまま。
 
 
 
 
 
 
私は限界に達した。
 
 
 
 
 
 
 ***

ときおり余韻の甘い痙攣に襲われる中、荒い息をなんとか一刻も早くおさめようと大きく呼吸を繰り返す私に、彼は低い声でささやく。
「ところで、私はまだなんだが?」
「・・・もう、や・・・だっ」
彼には悪いとは思ったが、正直これ以上今ここで、というのは私のキャパシティーを超えていた。
これ以上されたら、私はどうなってしまうかわからない。
 
本気で言ったのが伝わったようで、サガは案外素直に私を解放してくれる。
まだ硬度を失っていない自身を私から抜くと(思わず声が漏れてしまった)、サガは膝の上に私を横抱きにする。
汗にはりついた私の前髪をそっとかきあげ、満足していないはずなのに、なぜか満ち足りた顔で私の鼻の頭に軽くキスをする。
「お前の鼻は冷たいな」
そんな言葉が、なぜか何よりもの愛の言葉に聞こえて、私は顔を彼の胸に押し付けた。
 
 
 
しばらく彼の鼓動を聞きながら休んで(彼はずっと私の髪をなでていた)、ようやく動けるようになった私はそろそろと立ち上がる。
冬のハイランドでは日が暮れるのは早い。まだ4時をほんの少しまわっただけだというのに、あたりにはもう夜の気配が満ちてきている。
 
手をつないで怪物のいなくなった湖を後にする。
 
廃墟の城の崩れかけた階段の上で振り返り、最後の一瞥を湖に投げかける。
隅々まで照らし出され、分析され、ふるいにかけられ、怪物はいなくなった。
でも、怪物のいなくなったかっての神秘の湖にはもう魔力はない。
 
私は私の怪物の手をぎゅっと握ると、もう振り向きもせず、ひとつに結わえた髪を揺らしながら彼と肩を並べて階段を下りていった。
 
 



 
 ***

世界的な観光地でなにやってるんですか。(すみません、通報しないでください)
 
サイト開設1月記念に頑張って挑戦してみましたが、この程度が私の限界です・・・orz
 
 
*インバネスコートは、シャーロックホームズが着ているケープつき袖無しのマントのようなコート。
袖ありバージョンもありますが、普通はサイドに開いた穴から手を出します。
Inverness(インバネス)はスコットランド・ハイランド地方の、ネス川(River Ness)の河口にある古い街です。
 
*ハイランドはヨーロッパで最も人口密度の低い地方で、荒涼とした山がちな厳しい風景が続きます。
二人がいるところは、ラムサール条約登録地・ネス湖畔に立つUrquhart castle(アークハート城)と思われます。


*留守中も訪問、拍手、どうもありがとうございました。

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中羊受および双子・獅子・シベリア師弟などについての妄想が渦巻くコキュートスです。
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