シュラ→ムウ３

お正月休みに、３Ｄで「ガリバー」と「トロン・レジェンド」を観ました。
でもどちらも思ったほど飛びだしてこなかったです。
というか、むしろそういうナチュラルな感じの３Ｄが潮流なのかな。

前作にも興味がわいたので、30年くらい前の「トロン」のトレーラー他も観てみました。
80年代初期のワクワク感・勢いはすごく伝わって来たけど（電脳ブラボー！的な）、
それほど「これはエポックメイキング！」とは思いませんでした。

となるとほぼ同時期の「ブレードランナー」がいかに凄かったってことですよね！（個人的感想です）
今や完全に定番となったあの手の世界観・イメージの映画、コミック、ゲーム、ノベル等々の原点であり、本当にすごい作品だと思います。
（大元の大元は戦前の「メトロポリス」なのかもしれないですが）

そしてブレードランナーと言えば、設定の原作となった小説ががまた素晴らしいですよね。
「アンドロイドは電気羊の夢をみるか？」　”Do Androids Dream of Electric Sheep?”　


…結局ここでしたね。
この小説のタイトルも本当に有名ですね。電気羊。
（フィリップ・k・ディックはボルヘスに通じるものがあると思います）

でもブレードランナーのレイチェルってちょっとムウ様っぽいイメージないですか？
お行儀よさげで（秘書！）ミステリアスな超美形だけど、やる時はやる（アクション）上に、静かに涙を流したりする所が。




（シュラ→ムウの方はお進みください）
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その日双魚宮で、俺はデスマスクとアフロディーテの三人で久々にゆっくり飲んでいた。
立場にしても抱えているものにしてもお互いのそれがよくわかっているこの三人の間では、遠慮も気遣いも全く無用だ。馬鹿話やざっくばらんな打ち明け話に興じる内にいつの間にか夜は更け、机には何本もの酒の空き瓶が転がっていた。

 

俺は席を立って、酔いを覚ましがてらテラスに出る。一本だけと取り出した煙草を咥えたまま白い月光に照らされた双魚宮のバラストレード（欄干）に腰かける。空を見上げるといざよい（十六夜）の月は既に西の空に傾いていた。

 

待ち望んだ満月の日は過ぎ、アテナの勝利という欠けるところのない望月を手にした聖域を16日目の月が照らす。

十六夜の月は躊躇うように登って来る。いざよいながら。

 

ほんの少しだけ欠けた月の白い輝きに誘われるように、俺ははるか下の白羊宮を眺めやる。

ほの青く輝く白羊宮の屋根が灰色の木立の間からかすかに見える。

月のように、そこに確かに見えるが、触れるにはとても遠い――

俺は最後の煙を大きく吐き出すと、煙草を消して部屋に戻ることにした。

 

 

テラスから居住区に入ると、キッチンによって冷たい水を何杯かごくごくと飲み干した。それからちょっと考えたが、冷蔵庫を開けてカールスバーグとイオリ（水）を何本か取り出す。もう酒はこんなものでいいだろう。

両手にビールの缶とイオリのボトルを持ったまま薄暗いアンティルーム（前室）を抜けて居間まで戻る。ドアを肩で押しあけようとしたその時、扉の向こうから二人の話す声が漏れてきた。

 

「……」

「……？」

 

耳にした思いがけない内容の話に一瞬息を呑む。

しかし立ち聞きは趣味ではない。俺は何事もなかったようにドアをぐいと押しあけた。

 

中にいた同僚達はハッとしたように眼を上げた。ビールと水を机の上に置く俺にちらと目を向けた二人は、さりげなく話題を変える。３人ともが何かに気づいていたが、誰もが何も気づかないふりで会話を続けた。

しかし今自分の耳が聞いた言葉は俺の脳に刻みつけられていた。

 

 

ムウがあのサガと深い仲だというのだ。――しかもずっと以前から、長い間。

 

 

 

俺は教皇を騙っていたころのサガが忙しい職務の合間を縫ってはプライベートでどこかへ行っていたのは知っていてが、まさか行き先がジャミールとは。

しかしそんなことはありえない。あの時、俺をあれほどの怒りに満ちた瞳で睨んでいたムウが、全ての張本人であるサガとなど――

 

もちろん、復活後の俺たちにとって過去は問わないのが不文律だが、それでも人間同士、敢えて気の合わない奴とはつるまないだろう。

ましてや事件当時聖域に反旗を翻してジャミールにこもっていたムウが、当時からサガと密かにつきあっていたなどということは考えられない。

そうだ、そんなことはありえない――

 

 

 

 

―――しかし、俺は見てしまった。

サガが去り、ムウが泣いているのを。

 

 

 

 

（続く）