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日々の萌語りとSS
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サガカノン、28歳おめでとうございます。

なにかお祝いしたいと思って、拙宅比明るく軽めの双子羊SSを書いてみました。サガ、カノン、たまにはムウ様と三人でバリあたりでおいしいものでも食べて、ゆっくり誕生日を過ごしてね。
*拍手どうもありがとうございます。サガムウボタンもどうもありがとうございます(^^)少しでも楽しんで頂けたら嬉しいです。
拍手お返事は反転しておきます。

MK様
サガ恋愛初心者説にご賛同いただきありがとうございましたv 有能なくせに恋愛に不器用なサガいいですよね(^^)「等身大の自分自身を丸裸に~」のくだり、笑いをこらえつつ拝読しておりましたが、最後の「ヌーディストのくせに…」で吹き出しました!楽しいコメントをどうもありがとうございました。




***


夜の海の静かな波音がきこえる。海に面したプライベートヴィラの大きなテラスで双子とムウは穏やかな週末の夕飯を楽しんでいた。

3人が囲んでいるのはテラスのプール脇に置かれた小さな丸テーブルだ。ヴィラの灯りは消されており、植物の葉形に刳りぬかれた石のガーデンライトがあたりを柔らかく照らし出していた。
食事を始めたときは海に沈んでいく夕日が美しかったが、空になった皿がヴィラ付きサーバントーの手で下げられる頃にはあたりはすっかり暗くなっていた。吹き始めた夕風にムウは水着の上に薄手のパーカーを羽織る。欄干の向こうにはすぐ目の前に暗い海が広がっているのが見えた。

テラス端のカウンターで好みを訊きながら魚や肉を調理してくれたコックはいつの間にか姿を消していた。サーヴァントも3人の前に銀のコーヒーポットとデザートの皿を置くと、静かにテラス脇の扉を閉めて出て行った。

サガはいつものように自分の前のデザートの皿を取り上げると、ムウの前に置こうとする。サガはレストランで自分のデザートを注文するが、それはいつも甘いもの好きのムウの2皿目のデザートにするためだ。

「あ、結構です。今日はサガも自分の分のケーキを食べて下さい」
「?もうお腹がいっぱいか?」
「いえ、そうではなくて」

「サガ、お前にしては察しが悪いな」
そのときカノンが口を挟んだ。
「え?」
皿の上には鮮やかな南国の花のアレンジとチョコレートで描かれたバースデーメッセージ。

「――暗いから気づかなかった」
「自分の誕生日を忘れるのは全く構わないが、たったひとりの可愛い弟の誕生日を忘れるのはいかがなものか」
「その通りだな、すまない、カノン」
「つまらない返しだな」

二人の会話にはおかまいなくムウは二人にほほ笑みかける。
「ケーキにろうそくを立てるのはやめておきました。とても28本もたてられるとは思いませんからね。その代わりこのキャンドルをバースデーのろうそくの代わりにしましょう。サガ、カノン、まず願いを言って下さい」

「そうだな、俺は地上を征服したい」
「28にもなってまだそんなこと言ってるんですか?あなたの願いはこの一年を健康に過ごせますように、でいいですね!」
「俺はまだ誕生日の願いに健康を願うほどの年では――」
ムウはカノンの言葉を無視するとサガに向き直った。

「サガ?あなたのバースデーウィッシュは何ですか?」
「私の願いか……。自ら何かを願うような行為が、私のような存在に許されるのだろうか。アテナの慈悲によって今ひとたびの生を許されたとはいえ――」
「はい!結構です!サガ、もうそれ以上言わなくてもいいです。あなたの願いも健康でいいですね」

話がまたややこしくなりそうな気配を察したムウは、すぐにサガを遮る。
「ギリシャのバースデーソングは知らないので省略させていただきます。お誕生日おめでとうございます、サガ、カノン。この一年がお二人にとって良き一年でありますように。では、二人でキャンドルを吹き消して下さい」

サガとカノンは一瞬目をあわせると、そのまま二人同時にテーブルの上のキャンドルに息を吹きかけた。キャンドルの炎は一瞬大きく輝くと、ふっと揺らいで消える。途端に辺りには真っ暗な闇につつまれた。

「誕生日おめでとうございます、カノン、サガ」
ムウはもう一度祝いの言葉を述べると、パチパチと手をたたく。微かな反響音が夜の空に響いた。そのまま音の行方を追うように視線をあげたムウは、あっと息をのむように小さく歓声をあげる。
「!すごい星空ですね」

月のない天鵞布のような空には一面に星が広がっていた。
ムウは立ち上がると、テラスの端から乗り出すように星空を見上げた。輝く靄のような銀河が暗い海に流れ込んでいる。
「こんなに綺麗な星空は久しぶりです。ほら、天の川があんなによくみえますよ!」

そう言った途端、ムウはすぐ横に人の気配を感じた。
「?」
隣に立つ暗い人影は無言のままいきなりムウの唇に軽いキスを落とした。
「!!」

驚いたムウの眼が丸く見開かれる。
すると今度は後ろから強い両腕でぎゅっと抱きしめられ、耳たぶをついばむようにキスされた
「!!!?」

耳を押さえて慌てて振り向いたが、もう誰もいない。
「~!」


その時、ぱっとあたりがまた明るくなった。
カノンがプールのライトのスイッチを入れ、サガがテーブルのキャンドルを再び灯したのだ。
揺らぐ波紋を投げかけるプールの水色の照明にテラス全体が幻想的に浮かび上がり、キャンドルの柔らかな金色の光がテーブルを丸く照らし出した。

「さて、ケーキを食べようか」
双子はふたりとも何事もなかったような知らん顔だ。
「……はい」

ムウはサガがひいてくれた椅子に座り、カノンがムウの前のグラスによく冷えたスプリッツァーを注いでくれた。
どちらがどちらだったんんだろう、とムウは二人の顔を眺めながら考える。
でも、どちらも暗闇で悪戯したのは自分だけだと思ってるんだろうな。

ムウは押さえきれずに小さく笑い声をもらす。
「では、もう一度乾杯しましょう。カノン、サガ、誕生日おめでとう!」
そんなムウを双子は少し訝しげに見たが、すぐに目を合わせて小さく肩をすくめるとグラスを手に取る。
三人は降るような星空に向かって誕生日のグラスをあわせた。






END

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