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日々の萌語りとSS
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HAPPY BIRTHDAY SHURA!! (1月12日)

短髪黒髪のシュラ、かっこいいですよね~

無口でストイックでもいいし、実は情熱的というのでもいい。
でもいずれにせよ、シュラはすごく真面目で誠実な人だと思います。
ちょっと不器用だったりするけれど、そこがまたいいですね。


…といいつつ、なかなか進展しないシュラ→ムウです。orz



  *拍手連打ありがとうございました。嬉しいですv やる気のもとです~。





***

 

最初に滞在先として届け出ていた住所には1週間もいないまま、サガはそのまま音信を絶った。
俺たちには消息不明でも、せめてアイオロスや(彼が今の教皇だ)、身内のカノンには連絡があるのかと思っていたら、どうやらそれすら無いようだった。
 
 
消息を聞こうと双児宮に足を運んだ俺は、ちょうど居住区から出てくるところだったカノンと鉢合わせた。
 
「カノン、サガは今どうしているのだ?」
「さあ、知らん」
 
びっくりするほどあっけない返答だった。俺は虚を突かれながらも言葉を継ぐ。
 
「心配ではないのか?」
「サガを心配する?ハッ、何故そんな必要がある?あいつは一時でも、聖域と地上を支配した男だぞ。といっても偽モノとしてだがな。
――あいつはちゃんと自分の面倒は自分で見られる。そして必要があれば聖域に迷惑をかけることなく、自分の始末は自分でつけるだろう。
もっとも、いやな感じはしないから、生きてはいるようだがな」
 
「…そうか、そんなものか」
「そうだ、そんなものだ」
 
ことさらに明るく軽い口調のカノンからは、それ以上サガの話はきけなかった。
 
 
 
***
 
「アイオロス、その後サガから連絡はあったか?」
教皇宮の執務室の大きなマホガニーの机に向かっていたアイオロスは、俺の質問に書類から目をあげた。
 
「サガか?いや、何の連絡も無いし、所在不明のままだ。」
「それで構わないのか?」
 
「手続き上は構わない、というべきだろうな。完全に退役し、一民間人となっているわけだから。
しかし友人としてということであれば、勿論気になる。
実は消息を絶ってから聖域の手のものに極秘で行方を捜させているのだが、今のところなんの手がかりもないのだ。さすがサガというべきか、万事にぬかりがない。
本当に見事に消えてしまったのだよ。まったく、あいつはどこか異次元にでも隠れているのか――
 
とはいえ、これだけ完全に姿を消しているということは、要するにサガは探してほしくないということなんだろう。
だから、今できることはあいつからの連絡を待つことだけだな。あいつの方からはいつでも聖域に戻ってこられるのだから」
 
その時、音も無く深紫の緞帳の影から人影が現れ、アイオロスの執務机の上に書類箱を置いた。
――ムウだ。
 
俺はまたしても、信じられないような下手を打った自分を心の中で呪った。
 
「今俺達にできるのは待つことだけだな、ムウ?」
「ええ。本人がその気になれば、戻って来るでしょう」
そっけないムウの言葉。
 
しかしよく見ると、指先が神経質に書類の束の端をいじっている。
 
「全く、迷惑ですよね。黄金聖闘士にまでなった人間が、いかに引退したとて聖域と全く関わりなく生きていくことなど、あらゆる意味で許されるわけもないのに」
 
「…まあ、サガも色々思うところがあるんだろう。
思えば、あいつにとっては聖域も黄金聖闘士の地位も決して幸せと結びつくものではなかったわけだからな。
自ら選んだ道とはいえ、聖域でのサガは心安らぐ時など全くなかっただろう…。
しかもようやく安らかに眠れると思ったら、再び思いがけない生を得ることになって――」
「自業自得ですよ!あの人は自分勝手に暴走するばかりの愚か者なのです!」
 
アイオロスは突然のムウの剣幕に少し驚いたようだった。
「――そうだよな、ムウ。お前がサガによってジャミールに追いやられ、人生を変えられてしまったと、
そう思うのも無理のないことだ。」
穏やかな声でアイオロスは視線を伏せたままのムウに語りかける。
 
「だがな、ムウ。サガを許せとはいわないが、わかってやれないか?
そしてその方がお前自身にとっても良いはずだ。シオン様も同じことをおっしゃるだろう。
――サガはとても人間らしいやつなのだ。人の弱さや愚かさも持っているが、人の素晴らしさもまた持っている男なのだ」
 
ムウは眼をあげるとアイオロスにかすかな微笑みを向ける。
「…アイオロス、あなたはいい人ですね」
「え?」
 
俺はこれ以上聞いているのが耐え難くなって、割って入った。
「いずれにせよ、サガからは連絡がないが、聖域としては特にそれで困ったことはない、と、そういうことですね」
 
ムウはそこで初めて俺の存在をしっかり認識したようで、自分とアイオロスの会話が俺にとってもまたかなり微妙なものだということに思い至ったようだった。
 
「ああ、そうだ。サガの件については、聖域の実務的な意味では現在なにも問題はない」
アイオロスは言葉を切るとわざわざ席を立って、俺の肩にぽんと手を置いた。
 
「そして、私はシュラに対しても含むところは何もない。シュラは軍人として当然の行動を、責任もって全力で果たしただけだ。
私が心からそう思っていることは、シュラも知っている」
 
ムウはアイオロスと俺とを見て言った。
「――サガが半分でもあなたのようだったらと思います、アイオロス」
 
 
 
***
 
 
俺は静かに聖域の階段を下りた。
アイオロスもどうやらムウとサガの間のことを知らないようだった。
そしてムウは、俺がいることなど眼に入っていなかった。
 
 
 
憎まれてさえいないのかもしれない―― ムウは憎むほどの強い思いさえ俺に向けていないのだろう。
 
 
では、自分だけなのか。
ずっとあの日の幼いムウの怒りに燃える瞳を覚えていたのは。
十二宮の夜の、流れる髪の間からまっすぐ射抜いてきたあの視線が忘れられないのは。
 
 
 
許されるかもしれないと、希望と絶望を同時に手にしたと思ったが、実はどちらも絶望を意味しているだけだということにその日俺は気付いた。
 
 
 (続く)

 

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