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日々の萌語りとSS
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宮澤賢治の詩の断片、「堅い瓔珞はまっすぐに下に垂れます」に(『春と修羅』補遺より)、サガムウみを受信しました。



「堅い瓔珞はまっすぐに下に垂れます」

堅い瓔珞はまっすぐに下に垂れます。
実にひらめきかゞやいてその生物は堕ちて来ます。

まことにこれらの天人たちの
水素よりもっと透明な
悲しみの叫びをいつかどこかで
あなたは聞きはしませんでしたか。
まっすぐに天を刺す氷の鎗の
その叫びをあなたはきっと聞いたでせう。

けれども堕ちるひとのことや
又溺れながらその苦い鹹水を
一心に呑みほさうとするひとたちの
はなしを聞いても今のあなたには
たゞある愚かな人たちのあはれなはなし
或は少しめづらしいことにだけ聞くでせう。

けれどもたゞさう考へたのと
ほんたうにその水を噛むときとは
まるっきりまるっきりちがひます。
それは全く熱いくらゐまで冷たく
味のないくらゐまで苦く
青黒さがすきとほるまでかなしいのです。

そこに堕ちた人たちはみな叫びます
わたくしがこの湖に堕ちたのだらうか
堕ちたといふことがあるのかと。
全くさうです、誰がはじめから信じませう。
それでもたうとう信ずるのです。
そして一そうかなしくなるのです。

こんなことを今あなたに云ったのは
あなたが堕ちないためにでなく
堕ちるために又泳ぎ切るためにです。
誰でもみんな見るのですし また
いちばん強い人たちは願ひによって堕ち
次いで人人と一緒に飛騰しますから。



自分が堕ちるとは思ってもみなかった天の人は、堅い瓔珞のように輝いていた少年サガ。失敗など他人事のように自信にあふれ、信じた道を邁進していました。

けれど13年前のあの日、スターヒルの丘でサガは、ひらめきかゞやいて堕ちていってしまいます。水素よりもっと透明な悲しみの、まっすぐに天を刺す氷の鎗の、無言の叫びをあげながら。
そして偽教皇としての13年間、味のないくらゐまで苦く、青黒さがすきとほるまでかなしい鹹水を噛む絶望の内に、たうとう自分の駄天を信ずるにいたり、そして一そうかなしくなります。

けれどそこにムウ様が現れます。
そしてサガに言うんですよね。

こんなことを今あなたに云ったのは
あなたが堕ちないためにでなく
堕ちるために又泳ぎ切るためにです
そして、
誰でもみんな見るのですし また
いちばん強い人たちは願ひによって堕ち
次いで人人と一緒に飛騰しますから。

と。


――これってすごくサガムウみありませんか…?(///▽///)

それで、ムウ様はサガを罵倒したり、サガの脛の傷をビシバシ指摘するといいと思うんですよね。それこそがサガにとっては泳ぎきるために必要なことでしょうから。

ムウ様は8歳も年下だし、ジャミール暮らしの職人肌で世間知らずなところもあるけれど、きっとある意味その分、憎しみやこだわりなどの夾雑物に惑わされず、純粋に真理や表面には現れない真実に到達する力があるんだと思います。
もちろんアレコレ悩んだり泣いたり恨んだりするんですが、最後は本当のことを見つけ、それときちんと向かい合う力がある。

その点、聖域で偽教皇を演じ続けているサガは、有能なだけにかえって現実世界に取り込まれているし、自身がやらかしたという自責の念もあってどうしても心理的に逃れられない。

そんな、偽りやしがらみや矜持や伝統や責任などのもろもろに縛られているサガに、まっすぐに真理=救いを届けてあげられるムウ様は、サガのguiding angelですね。


(青空文庫 ttp://www.aozora.gr.jp/cards/000081/files/43040_15400.html)

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