リアムウ続き(その5)。
*拍手ありがとうございました。
不器用だけどまっすぐなアイオリアは、色々複雑になりがちなムウ様をきっと正面突破してくれるよね!という妄想。
まずい!
俺は自分がへまをしでかしたのに瞬時に気づいた。さっきあれ程近くに感じたムウが、急に遠ざかる。
「…理由も分らず、なぜ謝ったりするのですか?」
「そ、それは、ムウを不快にさせてしまったことを申し訳ないと思ったからだ!」
「私は自分で勝手に不快になっただけです。アイオリアは別に私の機嫌を取る必要などありません。
あなただって私の態度に不快になったでしょう?お互い様じゃないですか。卑屈なご機嫌とりなど言わないで下さい」
雲行きはどんどん怪しくなってくる。綺麗に晴れた夜なのに、不穏な遠雷の音が聞こえたような気がした。
「いや、俺はお前に対して不快になどなっていない。むしろ、俺は、あの勅の時――不謹慎な言い方だがお前と共闘できて楽しいとすら思っていたのだ」
だが、これもまた勝手な俺の思いはムウには全く通じないようだった。
「共闘できて楽しかった、ですか?アイオリアの言う共闘とはなんですか?雑魚は私にまかせて、自分は自身の命などかえりみず目的遂行のために無茶をすることですか?」
「俺のいい方がまずかった!『楽しい』というのは、共に闘っていると言う実感が――」
「『共に』闘っている?あの闘い方をそんな風に表現するのですか?あなたのやり方は自分の命を投げ出して、後のことはお前にまかせた、と、そういうことだったでしょう?」
「いや、そういうわけでは―― 」
「せっかく女神の慈愛と奇跡により再びの生を得たというのに、無思慮に自分を命を危険に曝すなど」
確かに俺はあの時、自分の身の安全も、その後のことなども全く考えていなかった。
だがそれはムウの存在に対する絶対的な信頼があったからだ。
俺はムウの前で死んだりしない。俺がボスさえ倒せば、ムウが残りすべてを片付けてくれるだろう。
そしてそういう存在であるムウに背中をまかせられるということの喜び――これがあの瞬間の俺の考えの全てだった。
「いや、俺は、つまり…お前なら全部まかせても上手くやってくれるだろうと。そしてお前と一緒に闘っている時、俺は絶対に負けたりしない。だから、命をおろそかにするつもりなど無かったし…」
だが、しどろもどろの説明を試みた俺の言葉は、我ながら楽観的で無責任なものに聞こえた。
「…私の事を信頼してくださるのは光栄ですが、あまりに身勝手な言い分ではないですか?」
ムウにあきれたような声で言われて、俺は押し黙る。
確かにそういうことではあるのだが、そういうことではないのだ。そういうことではなくて――
俺は天を仰いでひとつ大きく息を吐いた。
こうして手を伸ばせば届くところにいて、顔を見て、直接声を聞いているのに、一番大事なことを伝えることができない。それどころか、近くにいる分だけ逆に遠く感じる――
ただ、ムウが大切なだけなのに。ムウの存在に言いつくせないほど感謝していて、俺はムウがいれば、できないことなどない、というだけなのに。
「…離れている時の方が、お前に近いなんてな」
自分の無力さに情けなくなり、俺の口からは気がつくとそんな言葉がこぼれていた。
俺の言葉にムウはきゅっと唇を引き結ぶ。そしてそのまま、踵を返して立ち去ろうとするように一歩足を踏み出した。
(続く)
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