忍者ブログ
日々の萌語りとSS
[728]  [726]  [370]  [725]  [724]  [723]  [722]  [721]  [720]  [718]  [717
昨日の続き。
2回に分けますと言っておきながら、すみません終わりませんでした。あとちょっと、もう0.6回分くらい。


*拍手※どうもありがとうございました。楽しみにしていましたと言っていただけて光栄です。
自爆気味な攻め黒サガとツンツンムウ様が明日に向かって迷走中ですが、しばらくおつきあいいただけると嬉しいです。



***



重厚なマホガニーの家具と贅沢なドレープの紺紫の緞帳。壁一面にはガラスの入った作りつけの戸棚。華やかな格天井にはヴォイニッチ手稿の植物とアリエスの文様が交互に描かれている。

「ようやく来たか」
そう言うとサガは、大きな革のウィングチェアから立ち上がった。
結局サガの手のひらの内と言うわけか、と苦々しく思いながらも、ムウはその部屋の美しさに思わずあたりを見回した。
戸棚のガラスの中には夥しい数の書籍や革箱、用途もわからぬ機械やキュリオ(骨董品)が整然と並べられている。
「ここは…あなたの、書斎ですか?」
「そうだ、そんなようなものだ。教皇は隠し部屋を持つことになっている」
ぐるりと視線をめぐらすと、背の高い窓の外には幾つもの奇岩が競い合うようにそびえている。
ではここはスターヒルなのか--?聖域の傍にある筈なのに死角になっているのか、それともある種の結界の中なのか、とてもそんな風には思えない。窓際の棚に並べられた沢山の砂時計越しに、遠くで青い海が小さく輝いているのが見えた。

「どうだ、気にいったか?お前のみすぼらしい根城とは大違いであろう」
「教皇の隠し部屋ということは、ここはシオン様の居室だったのですか?」
「まさか。あんな年寄りが200年も使っていた部屋を、私がそのまま引き継ぐものか。アテナを新しくお迎えしたという事で、全てを作り直させた。それこそカーテン一枚、金具ひとつからな。それと同時に、より外部から気づかれぬよう結界も強化してある」
「でしょうね、あなたには人の眼を盗んでこそこそと隠れる場所が必要ですものね」
ぎらりとサガの目が光った。
「口のきき方には気をつけた方がいいぞ。ここで何が起ころうと外には一切洩れることはない。それに教皇の隠し部屋には、伝統的に拷問のための設備も備えつけられている」

ムウはひるむことなく高く頭を掲げたまま、ぐるりと部屋を見渡した。
部屋の一方の端の壁は歴代教皇のクレストが織り込まれたタペストリーで覆われ、格天井の梁には聖域とアリエスの紋章が浅浮彫で描き出されている。その他にもそこここにアリエスと聖域の紋章が精緻な寄木象嵌で刻まれていた。

「なるほど、あそこのタペストリーの向こうがその”設備”とやらですか。それにしてもせっかく改装したというのに、どこもかしこも教皇たるアリエスの紋章だらけですね。あなたが何の関係もないアリエスの紋章を使用しているのは、大変気分が悪いのですが」
「お前がどう感じようと関係ない。ここは教皇の隠し部屋として、代々の意匠プランに従って作られているだけだ」

ムウはテーブルに置かれていた封蝋のための印を取り上げた。凝ったSを描いたカーブの端は、そのまま優美なアリエスの角のような螺旋を描いたデザインとなっている。
(――では、このSのイニシャルはシオン様のSという訳か)
サガが師の名前を騙り、教皇シオンとして振る舞っている現実をまざまざと感じ、怒りがあらためて湧きあがってくる。

「――よくも自分が謀殺した人間の名を騙り、その人のふりをして偉ぶってなどいられますね?シオン様の名前を盗み、その威光を頼りに世界の支配をたくらむなど」
怒りにかすかに声を震わせるムウの手からサガは教皇の封蝋印を取り上げると元の場所に置いた。
「何を勘違いしている?結果的にこうなっているだけだ。私はシオンの名前など必要としていない」
「どういう意味ですか?シオン様になりかわってその立場を盗み、シオン様の威を借りて自分の欲を満たすために、あのような見下げ果てた蛮行にでたのでしょう?あなたは卑劣な盗人です」

「頭が悪いやつだな。人の話をきちんと聞け。
私はシオンになりかわるためにシオンを殺したのではない。単に、結果としてシオンになりかわっているにすぎない。シオンの名前の権威など、私が今、聖域の頂点に立っていることに何の関係もない。これは私自身の実力だ」
「言ってることの意味が分りません。では何故シオン様を殺めるようなことをしたのですか?なにか目的があってのことでしょう?」
「お前は勘違いしている。目的があってシオンを殺めたのではない。何度も言っているであろう?結果的にこうなったのだと」
「あなたは、あれだけの事件が”結果的にそうなっただけだ”というのですか!?支離滅裂です。ではお聞きしますが、”なんの結果”、そうなったのですか?あの日スターヒルで何が起こったというのですか?」

「それは――」
話しかけたサガは、どこかに幼い頃の面影を残す真剣なムウの表情に気づいて、フと皮肉な笑いを浮かべた。
「――そんなことはお前には関係ない」
そう言うとサガはすっと近づいてムウの上腕をぐいっとつかんだ。
「触らないでください!」
「お前の意見は聞いていないと言っているであろう」
ムウはサガの手を振り払うと、サガを見上げた。
「何故、あんなことをしたのですか?」

「……神に代わって地上の支配者となるためだ」
「神に代わって?だって、あなたは次期教皇候補――」
「シオンは内々にアイオロスを次期教皇に指名していた」
「え?」
「そう、流石にお前の師は慧眼だったな。私には邪悪があると。それが心配だから私を教皇にすることはできないと言ったのだ」
「!」
「結局、シオンの言うとおり、私は邪悪そのものだったというわけだが」

サガはもう一度ムウの肩をつかむと、驚きのあまり言葉を失ったムウを教皇宮の大きなソファの上に突き倒した。そのまま片手片膝をムウの脇について、ソファに倒れたムウを見下ろす。
「だがどうだ、私はアリエスに勝ち、全てを手に入れた」」
「アリエス?」
「そう、私を認めなかったアリエスの教皇。そのアリエスが統べる聖域。だが、私はアリエスの教皇からその地位を奪った。
そして今、聖域もお前というアリエスも結局私のものだ。私は全てを自分の力で手に入れた」
「……全てを、私を、手に入れたと言うのですか?」
「そうだ、アリエスのムウよ。お前は私のものだ」
「――私がアリエスだからそのように執着しているというのですね」
ムウは自分にのしかかるサガに向けて、いきなり技を放った。
「SDR!」
一瞬の閃光が空間を貫き、近すぎてよけきれなかったサガは大きく吹っ飛んで壁にぶつかった。ソファから素早く起き上がったムウは床に崩れ落ちたサガを見下ろし、侮蔑の言葉を吐き捨てる。
「下劣ですね。そこまで情けないとは、見下げ果てました!」

「――私との”戦闘訓練”も無駄ではなかったようだな。閨で本懐を遂げようとは、立派に育ったものだ。白羊宮の黄金聖闘士にふさわしい実力だな」
サガはゆっくりと立ち上がる。
「だが」
光が一閃、ムウの身体は激しく床に叩きつけられる。
「そのような生意気な口を叩く代償は十分覚悟の上だろうな!?」




***


ムウの白い首には鎖のついた太い金属の首輪がはめられ、背中ににまわされた両手首は手錠で縛められていた。両足首にも重たい鎖がはめられ、とても思うようには動けない。
横たわったサガの上に大きく足を開いて座らされ、深く貫かれているムウはもどかしげに身じろぎした。

「早く終わらせたいのであろう?私は動かないから自分で動け」
ムウの瞳が怒りに燃え上がる。
「それとも、いつまでもこのままがいいというのか?全くあさましいな。だが、お前の好きにするがいい。お前がゆっくり楽しみたいというのなら、つきあうぞ」
サガはそう言うと横たわったままムウの腰をつかんでぐっとひきつけ、一層深く突きいれた。
「……!」
ムウは思わず声をあげそうになりながらも、屈辱に唇を噛む。

「この趣向が気に入ったようだな?」
サガはムウの器官をゆるゆると撫であげながら冷笑を浮かべる。

「これは、教皇自らが極秘でことにあたらねばならない時のために、神話の時代より教皇宮に必ず備え付けられる尋問や拷問用の仕掛けだ。もっとも実際に使用した教皇がいたかという話よりは、力と権威の象徴のようなものだがな。
だがこの部屋を改装した時も、その設備は当然のものとして設置された。お前の鎖も全て小宇宙を無効化する特別誂えのものだ。外そうなどと抗っても無駄だ」

自分を重く縛める鎖や錠が普通の物ではないことは、ムウは十分に分かっていた。これを外すのは不可能だ。だから自由になるためには、サガを満足させるしかない――
ムウは小さく息を吐く。
「……あなたは自分のしたことの報いを必ず受けることになるでしょう」
ムウの全身からは押し殺した冷たい怒りがあふれ出す。
しかし、サガはそんなムウの切っ先鋭い刃のような言葉に、あっけなく答える。
「無論だ、自分が負うべきものは当然負う。対価を払うのは当然のことだ」
「?」
サガの声の調子に、ムウはサガの顔に眼を向ける。
「――だが、それまでは私は好きにする」

そう淡々と言うとサガは起き上がり、腰に乗せたムウと抱き合うような対面座位になる。一層深くなった挿入に、ムウの顔がこらえきれない苦痛と快感に歪んだ。
「この部屋に”招待”したのはお前だけだ」
鎖で幾重にも捕えられたムウの身体を強く抱き、サガは貪るように唇を重ねる。


「そしてこれからもお前以外の者をこの部屋に入れるつもりはない――」




(続)

***

拍手[140回]

PR
web拍手
カレンダー
04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
ブログ内検索
バナー。リンクの際はお持ち帰りでお願い致します。
プロフィール
HN:
たると
HP:
性別:
女性
自己紹介:
中羊受および双子・獅子・シベリア師弟などについての妄想が渦巻くコキュートスです。
その他☆矢派生作品(Ω、LC等々)の感想も。
御用の方は拍手またはこちらまでどうぞ↓
gotoplanisphere☆yahoo.co.jp ☆→@

忍者ブログ [PR]